はじめに

この記事はきんととさん主催の「VRoidまっ会アドベントカレンダー2024」12月5日の記事です。

みなさん、メリークリスマス! 

バーチャルに入る時、必ず誰かの知見を用いて入っている

君はどうやって「この姿」になって、ここに居る?

さて、この現実の物理世界からバーチャルの世界に介入し、物理世界とは異なる容姿で活動している以上、誰かしらが提供しているであろう「知見」を知って実践して入っているでしょう。

バーチャルな存在は、雑にくくれば「知見の集合体」といえると私は考えています。先人が残してくれた知見の結晶です。

キャラクターをデザイン(イラスト原案)、それをlive2dまたは3Dのモデリング、表情+骨格を自由に動かせるように設定(セットアップ)、それらを制御するソフトの使用方法、の知見が必要になってくることでしょう。

VRソーシャル(VRChatやclusterなど)で3Dモデルを使いたい方は、それぞれのVRソーシャル向けにセットアップする必要がありますよね?

キャラクターを制御するソフトから見ても、そもそもそのソフトを開発してくれた人、ソフトを使うための資料を作った人、そのソフトを開発するために使う開発環境やプラグインを作った人…、といった感じにたくさんの人の知見が関わっています。

ここまでは、バーチャルに入る為のスタート地点として「容姿」を取り上げてみました。「容姿」の時点で複数人がかかわっていてその人たちそれぞれの知見があるでしょう。おそらく大半の人たちはこれらを調べて自分でやってみたり、あるいは専門外なので外注したりして解決していることでしょう。

…でも、バーチャルで表現するのは何も「容姿」だけが知りたいことではありませんよね?

バーチャルの「知見」はいわゆる「イラスト」「IT・技術」だけとは限らない!

私が考えるに、バーチャルの「知見」って、範囲がもっともっと広いと考えています。

例えば思いつく範囲だと…。

  • 「文章を書く、プレゼンする」
    • →知見を共有したくても、この辺が枷になる人もいそう?
  • 「トーク術」
    • →特に生配信が多い人とか
  • 「声の出し方」
    • →発声方法とか、キャラ声を出す方法とか
    • →ボイチェン勢は各機材のセットアップ方法も該当しそう
  • 「VRソーシャルでのコミュニケーション」
  • 「芸術・ファッションなどセンス」
  • 「アバターフォト」
    • →構図とかポージングとか?
  • 「イベント主催」
    • →それこそ交流会のような小規模から、参加者を募る大規模イベントの運営ノウハウ
  • 「ライブの演奏や運営」
  • 「開発者じゃない人向けにunityの操作方法とか、小ネタ」
  • 「VRoid→他ソフトとの連携、改変の作業工程」
  • 「雑学など」
    • →何かのジャンルに特化している人なら〇〇系Vとかできそう
  • 「本業で得た知識」
    • →くれぐれもお勤め先の企業機密の取扱いに注意して下さいね。
    • →同人誌やデジタル販売、広告収入などで収益を得る可能性がある場合は、お勤め先の就業規則も確認してください。

等が挙げられます。

バーチャルな存在は「知見の集合体」、先人の知見の結晶です。誰かが知見を共有していけば、それを見た誰かが助けられます。様々な領域の誰かがちょっとずつ知見を共有、それを誰かがみて共有…。

この共有の輪は初めは小さいですが、この共有が広がると、ある時他の領域の輪に重なり今まで解決できなかった問題が解決できるようになるかもしれません。

他の領域の輪は、まったく自分とは関係ない領域の専門家かもしれませんし、あるいは今までバーチャルに参入したかったけどできなかった企業に届くこともあるかもしれません。バーチャルのお洋服を現実のアパレルブランドが出すこと、昔は考えられませんでしたもんね。

バーチャル○○の知恵袋、あるいは備忘録のススメ

あなたが有名かどうかなんて関係ない。個人も企業にも、あなたの知見を知りたい存在が居る

私が「あなたのノウハウ共有しようぜ」っていうと、おそらくこういう意見を言う人がいるんじゃないかなと推測しています。

  • 「自分は知名度ないし…」
  • 「信用させる為の背景もない」
  • 「それ、言うの私じゃなくても良くない?」→「これ貴方じゃなくても言えるよね?」って言われそう
  • 「誰にも読まれなさそう(orバズらなさそう)」

確かに、「ただ貴方が知っている事、事実」を単純に並べただけなら、それは「誰が書いても同じじゃない?」と言えます。

例えるなら黒板に書かれた事をただノートに写しただけとか、或いは既に知られている解法を載せるだけ、特にルールを決めずにありとあらゆるジャンルの知っている言葉を並べただけ(単なるデータベース的な感じ)みたいな状況が近いですね。

でも、これらに対して「あなたの考え、経験」を反映したら…?あるいは「このように伝えたいから、こう言うふうに使って欲しいから」と一定の選定理由を持ってデータベースに知識を並べたら…?

例えば、

  • 「ある知見を実行しようとしたけど、自分の環境でこのやり方は上手くできなかったよ(バッドノウハウ)」
  • 「この機器とこのソフトの相性は望ましい結果ではなかった」
  • 「このバージョンでこの方法使うと不具合出るよ」
  • 「逆にこのやり方なら良い結果を残せたよ」
  • 「こんなものを作りたかったけど、こうするとできるよ」
  • 「このイベント行ってきたけど、こんな経験できたよ(イベント参加レポート)」
  • 「〇〇という企画では△△を担当したけど、ここはうまくできた/ここを改善できたら良かったな」
  • 「初心者が○日で3Dモデル(Live2dモデル)作ってみたらこうなった(製作レポ)」
  • 「初期設定だとイメージと合わないけれど、ここをこうするともっと良くなるよ」
  • 「お着替え大好きのファッション解説」
  • 「〇〇オタクによる、〇〇の解説(きっとバーチャルで役立つ知識もあるかも?)」

と言った「自分の経験を加味した」としたら、その知見に「その人だけの付加価値」が生まれると考えています。

記事執筆時点(2024年12月4日)のまっ会アドベント・カレンダーの予定一覧をみても、おそらく皆「自分の経験を加味した、自分だけの付加価値」を持った記事が投稿されそうでワクワクですね!(私が知らないトピックもあるので、記事が公開され次第拝見させていただきますね)

バッドノウハウに関しては広く一般の人が見る商業流通の書籍で載せるのは正直厳しいですが(後から修正できませんし)、同人誌やネットでしたら「ボツ」で表に出ないということはないので比較的書きやすいですね。

「個人にも企業にも、あなたの知見を知りたい存在が居る」って想像つきにくいと思います。

あなたが何気なくバーチャル表現のために使っているソフトの設定とか、バーチャルのお洋服の作り方・販売、特定のソフトで姿勢が変になるのを矯正する、表情を拡張するなどなど…。あなただけが知っている「コツ」、なにかあるんじゃないですか?

リアルの同人イベに数回参加した時と過去の案件のときの体感ですが、意外と「これどうやってるの?知りたい!」って企業さん・個人さんはいるんじゃないかなって?感じています(特にゲームや映像に関わりないけど、メタバースに取り込んでみたい!って企業さんとか)。3D系のノウハウとか、メタバースの文化、イベント運営などって、知りたい情報がピッタリで出てこないなんてことありそうですもんね〜。

あと「誰にも読まれなさそう(orバズらなさそう)」に関してなんですけど、個人的な意見としては「それ自体でお金をガッツリ稼ぎたいのでなければ、無理にバズりを狙わなくてもいい」と考えています(ちょっとマイナーだけど深く突っ込んだ技術系の話なら尚更)。

自分が学んだ事を書いて、それをある日誰かが見て、結果ちょっとハッピーになればいいやという気持ちで書けばいいかな〜と思いますね。

知見の共有のある世界、ない世界

バーチャルな存在は「知見の集合体」、先人の知見の結晶です。先人が積み重ねた知見が、今の私たちを作り上げているといっても過言ではないでしょう。知見の共有のある世界はこんな感じになるでしょう。

  • ●どんな立場の人でも、やりたい事の道筋に簡単にアクセスできる
    • →その気になれば子供からお年寄り、専門の会社の社員や学生になれなかった人も挑戦できる可能性がある
  • ●生産性やトラブル解決力のアップ
    • →誰かの説明で即座に解決できなかったとしても、他の人の知見を見つけたら解決の糸筋が見えるかもしれない
  • ● みんなの知見はただの「点」だけど、点が集まれば線になり、やがて円になる。円が広がれば、誰かが知りたかった事や、やりたかった事への道筋が見えてくるはず
  • ●情報を伝えるデメリットもある
    • ○どんな立場であれ、自分が発信する事には責任を持つべき
    • ○情報の取捨選択の必要性
  • ●トピックによってはSEO稼ぎの量産記事に阻まれて検索しづらい事もあるかも
  • ※誰かに悪用される?パクられる?
    • →個人的に「ノウハウ」は表現そのものではなく、あくまでそれを成すための手段と考えているのであんまり気にした事なくて…。上手い反論思い付かなくてゴメン

反対に、もし知見の共有がなかったらこんな感じの世界になるでしょう。

  • ●特定の人だけが知見を知ることのできる世界
    • →やりたい事を知っている存在が「特定の学校や会社、組織」の人しかいない世界は、自分もその存在の人になる事ができなければ知ることが難しい
    • →様々な事情(倍率、年齢、才能、身体、置かれている環境など)で、その存在になる事が極めて困難な場合がある
    • →環境を変えたり人脈で解決できる場合もある?
  • ●専門家ではないクライアントがざっくりとでも知識を得られる場所が無かった場合、知識の有無によるイメージの相違が発生するかも
    • ○あるイベント用に出演者さんの3DモデリングをVRoidで行った際に、この問題があったことから挙げてみました(その時は拙作の同人誌の一部ページを見せたり、追加で解説が必要な事項は即席で資料を作ったりしました)。
    • ○もっとも、クライアント側も知識を得る努力をしなければ完全に解決することは難しい課題ではありますが、少なくとも何処かで資料を見て、キャラクター3Dの制作の流れや出来る事出来ない事を知れる方が良いのかなと考えています(今は商業本でVRoidに特化した本もあるので、以前より特性を知りやすくなっている…とは思う)。
  • ●わからない事があった時に解決しづらい、解決できない可能性がある
    • →共有している知見の数が少ないと、誰かの知見で解決できなかった場合そこで詰んでしまう可能性がある
  • ●効率化の道筋が見えない場合がある
  • ●やりたい事に対して道筋が見えないと、そもそも何もできない
    • →例えば○○を作りたいとなった時に、どこでどうやって知識や技術を得られるの?というのを知る事ができないと、そもそも勉強する術が無い…という感じ
  • ⚫︎一方で、自分だけの知見を共有しなかったら、誰かにパクられたり悪用されたりするリスクは低い。
    • ○少なくとも心は平和でいられる?
      • ○しかし、もし自分が居なくなってしまったら、もう誰も再現できる人がいない「ロストテクノロジー」になってしまうかも

これは私の過去の思い出話なんですけど、私は過去にVRoid Studioの旧β版のキャラ3Dのハウツー同人誌を出していました(電子書籍ですが)。

当初は「VRoid Studioはもっとこう、自分のデザインにできるよ」というのを他のVRoidユーザー間に伝えられればいいかな?という感じだったんですが、その2年後にとある教室で教材として使っていたというメッセージを受け取って驚いたことを覚えています。

更に正式版でも同人誌(VRoidの文化や細かいノウハウも有り)を書いて出したら、技術書典(技術系同人イベントの一つ)でピクシブの社員さんや専門学校の先生が来て少しお話したり…なんてこともありました。

ウソは書かない!自分が分からない事は「分からない」と言ってもいい

どのような形であれ、知見という名の「情報」を発信するのであれば、自分が言ったことに対しての責任くらいは持ちましょう。子どもであれ大人であれ、あるいは人ならざる者、バーチャル○○であれ、どういう立場の人であっても何らかの媒体で「情報」を発信する以上は「発信者」になります。

この項の題名にある「自分が分からない事」というのは、自分がある話題に対しての理解度が十分ではなく、他人に対してきちんと説明する事ができない事を指します。反論意見があったとしても十分に議論ができないでしょう。

ある話題に対して「自分はここまでの範囲なら分かる」という事をなるべく明確にしたほうがいいでしょう。

もし専門的な解説が必要な話題をするのであれば、本屋さんや図書館、その道の専門家が運営しているサイトなど信頼できる資料を探しましょう。トピックによっては大学の論文や他の言語の資料を探すのも手です(そういえば昔、blenderで知りたいこと調べようとしたら英語の資料しかなかった事あったなー)。

もし自分が間違ったことを発信したことに気がついてしまった場合は、できるだけ早く訂正しましょう。

どうやって発信する?

「本にまとめるまでもない」程度の小ネタなら、以下のサイトで雑に書くのが気楽でしょう。

  • Xやdiscordなどの各種SNS
  • 個人ブログ、将来的に有料記事とか書きたいならnoteやpixiv FANBOXなどもアリかも
  • 動画投稿サイト

とはいえどこかのサービス「だけ」に依存する事は、運営元の消失などで情報が丸ごと消えてしまうリスクを常にはらんでいます。ですので、もしSNSに投稿した小ネタがまとまった数あるのでしたら、本や記事、動画にまとめて別途公開したほうがいいんじゃないかな〜と思います。本(同人誌、電子書籍)なら購入者の手元に残りますもんね。

どうせならイベント合わせで〆切駆動で一気に駆け抜けるのもアリ

もし、何かのイベントに合わせられる機会がありましたら、いっそイベント合わせで一気に書いてしまうのもおすすめです。今回の記事はもともと同人誌向けに考えていたネタ(小規模トピックのためページ数の懸念あった)ではありますが、アドベント・カレンダーが開催されたのでこれをきっかけに書いたのでした。

  • アドベントカレンダーに参加
  • カンファレンスでプレゼン
  • 同人即売会・バーチャルイベント向けに本を書く(電子書籍、同人誌など)

おわりに

この記事は「バーチャルで私にはできないすごいことやってる人や自分だけの知恵袋ある人は、積極的にどこかに残してほしい!」という願いで作られました。というのも、自分は去年からリアルイベントの「技術書典」「技書博」「VketReal(※バーチャルイベントVIRTUAL MARKETの企画の内の一つ)」と立て続けに参加した中で、「バーチャルの知見のうち、IT・技術にかぶる物はこういう場所で公開できるし実際欲しい人も多種多様いるけれど、もっとIT・技術の枠に微妙にはまりそうではまらないネタってなかなか発信しづらい…でも知りたい人は絶対いるはず」というように思ったからでした。

このネタ自体は「いつか技術同人誌のネタにしたいけど、本としてのボリュームが足りるかどうか」というネタとして持っていたものです。途中から「項目増やしすぎてブログにしては文章量多くなりすぎそう…」となり、具体的に自分の知見をどうやって発信するか?の情報や蛇足になりそうな箇所をカットさせていただきました。具体的な文章の書き方や本の出し方などは先人の知見に任せます。ごめんなさい。同人誌の書き方などは、既に商業の本もあるので探してみてください。技術同人誌に関してはジャンルを絞って「技術同人誌」で探すといいかもしれません。

同人誌の書き方とか、kindleで本を出す方法とかいつか出せたらいいなぁ。

あ、あとこういう「IT・技術」に直接かぶらない知見を共有できるイベントがあったらいいな~。リアルイベだと「VketReal」「Vライフ!」「Vライフ/N! 」あたりは、広くバーチャル系の知見を書いた本を出しやすそうな感じがします。お家から参加できるバーチャルイベントだと「Vket」「NEOKET(オールジャンルで募集している回なら)」あたりかな…?

余談

ちなみに、自分が3Dなどの調べ物をしている時のGoogle検索結果に自分のサイト(過去バージョンでの話とか)が出てくる事があるんですが、そういう時に「違ーう!私が欲しい情報それじゃない!」となります。

ただし過去にどうやって解決したかがあやふやな時など、稀に助かる事もあります。

以上!